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とししゅん
蜘蛛の糸・杜子春
Read 蜘蛛の糸・杜子春 (とししゅん) by Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 24,703 characters · 52 screens
遠藤は片手にピストルを握ったまま、片手に次の間の戸口を指さしました。
「それでもまだ剛情を張るんなら、あすこにいる支那人をつれて来い」
「あれは私の貰い子だよ」
婆さんはやはり嘲るように、にやにや独り笑っているのです。
「貰い子か貰い子でないか、一目見りゃわかることだ。貴様がつれて来なければ、おれがあすこへ行って見る」
遠藤が次の間へ踏みこもうとすると、咄嗟に印度人の婆さんは、その戸口に立ち塞がりました。
「ここは私の家だよ。見ず知らずのお前さんなんぞに、奥へはいられてたまるものか」
「退け。退かないと射殺すぞ」
遠藤はピストルを挙げました。いや、挙げようとしたのです。が、その拍子に婆さんが、鴉の啼くような声を立てたかと思うと、まるで電気に打たれたように、ピストルは手から落ちてしまいました。これには勇み立った遠藤も、さすがに胆をひしがれたのでしょう、ちょいとの間は不思議そうに、あたりを見廻していましたが、忽ち又勇気をとり直すと、
「魔法使め」と罵りながら、虎のように婆さんへ飛びかかりました。
が、婆さんもさるものです。ひらりと身を躱すが早いか、そこにあった箒をとって、又掴みかかろうとする遠藤の顔へ、床の上の五味を掃きかけました。