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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,726 characters · 90 screens
一人の老いたガキと、二人の若いガキは物もいわずに食事時間が、早過ぎて済むのを惜しんでいるくらいであった。
二三日後から私は烈しい咳はしていたが、なおった患者のつらつきで病院の廊下を歩いた。何時の間にか私は顔見知りの看護婦さんから、一様におしょう水が出ますかと見舞いの言葉を受け、私はもうすっかり治りましたと答えた。どうしてしょう水の出ないのがこんなに評判になったのかと思った。僅かに主治医のたった一遍のうなずきで、私は斯様に快活になれたのだ。病院での医師の意志というものがどんなに患者にとって、大きく苦悩をとりのぞく元になることか。排尿の快適さを白いタイルの上に踏んで、しゃあとやることは、実に半年ぶりであった。まだか、まだか、という軽井沢でのはばかりの声は耳にあるが、まだか、まだかと呼び続けるようなその声は山の上からもして来たようだ。
コバルト放射線室の事務室には、いつも一人の若い医師しかいなかった。白い上着とズボンとが運搬用エレベーターから降りると、混凝土のとんねる様式の長い廊下に出るとすぐにその白衣の姿が見えた。十分間くらいの放射を必要とする患者は、寝台車とか手押車で次からはこばれ、医師はそのこまかい十分間置きの患者に機械の操作を試みるのだが、おちつかない忙しいしごとの繁雑さが私にもよく察せられた。