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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
「だってきみがスカートをはいたら、どうなる、」
「見ていらっしゃい、ちゃんと作ってお見せするから。どう、あたい、つめたいからだをしているでしょう。ほら、ここがお腹なのよ。」
「お、冷たい。」
「むかしね、おじさま、」
「また秦の始皇が大きな鯉と寝て風邪をひいたという話でしょう、それなら何遍も聴いたよ、それでなきゃ唐の姫達が一疋ずつ金魚を口にふくんで、皇帝の穏座を飾ったという話だろう、うまいことを考えついたものだね。金魚を咥えて伺候するなんてね。」
「むかしむかしね、おじさま。」
「ふむ。」
「あたい達の眼があんまり動かないので、瞬きをして表情を多様にするための眼のお医者様がいたのよ、いまの眼を大きくする病院みたいなところなのよ、その眼医者がたいへん流行っちゃって、みんな、眼の治療に行ったけれど、後でよく気がつくと、眼ん玉が引っくり返っただけで依然として、金魚の眼はまたたくことが出来ないで、じっとしているじゃないの。」
「金魚の眼はいやに動かない眼だな。」
「だから紅鱗瞳と競い、瞳孔人これを見ずという悲しい詩があるくらいだわ、おじさま、そんなに尾っぽをいじくっちゃだめ、いたいわよ、尾っぽはね、根元のほうから先の方に向けて、そっと撫でおろすようにしないと、弱い扇だからすぐ裂けるわよ、そう、そんなふうに水のさわるように撫でるの