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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
」
「じゃ、まいりません、あんしんして行っていらっしゃい。階段は辷るから気をつけてね。それから、パイプをわすれないで持って帰っていらっしゃい。」
「じゃ行って来る。」
「卓の上にコップと水を頼んで置かなくちゃね。お話に詰ったら、おひやをあがるがいいわ。たすかるわよ。」
「金魚じゃあるまいし、水なんかいらないよ、水ばかり飲んで降壇したらどうなるんだ。水を飲みに演壇に立つようなものだ。」
「それなら、なお拍手喝采だわ、コップの水を飲んで、それきりで降壇するエンゼツもあっていいじゃないの。」
「あ、困った。」
「くるまが来たわよ、あら、美しい婦人記者がお迎えなのよ。ぴちぴちしていて、くるまと同じ色の靴はいていらっしゃる。」
「きょうは美人も眼にはいらない。」
「なんて顔なさるの、ほら、お帽子よ。」
「じゃ、行って来る、来ないでくれよ。」
「じゃ、行ってらっしゃい。おじさま、顔、もう一遍見せて、それでいいわ、もう元気が出て来て、かくごをしたお顔色になっているわ。」
「あの、お見受けしたところ、どこか、おからだがお悪いんじゃございませんか。」
「は、少し何だかきゅうに。」
「たいへんお呼吸が苦しそうですが、お水でも、おあがりになりましたら?」