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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
「まあ失礼ね、でも、驚いちゃった、今まであたいの化けの皮をはいだ人は一人しかいなかったのに、あんたは一見、すぐ剥いでおしまいになったわね、どういうところでお判りになります、……」
「言葉づかいの甘ったれ工合でも判るし、第一、人間はそんなに絶え間なくブルブルと顫えていはしません、ちっとも、おちついていらっしゃらない。」
「これから気をつけるわ、あたいね、毎日、もう寒くてぶるぶるしているんですもの、でも、あんたの化け方は巧いわね、それに煙草でも喫んでお見せになったら、にせ物だとは誰も気附かないわ。」
「先刻ね、何でもおじさまの事はしてお上げすると、仰有ったわね。」
「ええ、言ったわ。だから、外の方には一さい何もして貰いたくないんです。あんただってお通しすれば、何をなさるか判りはしない。」
「じゃ、お通ししてくださらないのね。」
「ええ、まあね、かんにんして戴くより外はないわ、お送りかたわら、そこらまで歩きましょうか。」
「どうしてお取次してくださるのが、おいやなんですか。」
「いやだわ、もう、寒くなるとあたいは、からだの自由が利かなくなるんですもの、あたいがいなくなったら、毎日でもいらっしゃい、その前にゆうれいだということをおじさまにそう言って置きます。