Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みかん
蜜柑
佐左木 俊郎
Read 蜜柑 (みかん) by 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,618 characters · 14 screens
――ほう、かれこれ正午だ。どうも日が短けくて。」
「まるで、馬の手綱のような……」とお美代は、弥平爺の財布の紐の太いのを笑った。
障子を押し開いて、お美代は縁側に弥平爺を見送った。お婆さんは、額縁に嵌められた風景画のような秋色の一隅を、ぼんやりと、潤んだ眼に映していた。
「ね、おめえも、早く帰んでえすぞ。俺も若え時、婿に行ったどこ逃げ出した罰で、今になってこれ……」
庭先で弥平爺は、こう、お美代に言っていた。
「なんぼ貧乏しても、田作る百姓、飯だけ喰えんだから。ね、早く帰って、辛えくっても、辛くて死ぬようなごとねえんだから、悪いごど言わねえ、辛抱していんでえす。」
弥平爺は、この言葉を、お美代のために言い残して帰って行った。併し、この言葉は、お婆さんも遠い昔の記憶の上に、現実とかけはなれた不思議な韻で聞き返すことが出来た。
四
その晩、お美代が隣の風呂から帰って来た時、お婆さんは雨戸を繰り開けて、縁側に蹲んでいた。月光に濡れて、お婆さんの顔はなお、一入蒼白かった。
「そんなところで、何しているの? 婆さんは。」
お美代は、雨戸に手をかけてその後ろに立った。