Japanese reading practice

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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

Read 血ぬられた懐刀 (ちぬられたかいとう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 35,586 characters · 71 screens

Aozora Bunko

「外出などもしないそうだ」

「つまりは守られているのだろう」

不破小四郎の邸の一間で、四五人の若い武士達が、雑然として話している。

宵を過ごした初夏の夜で、衣笠山の方へでも翔けるのであろう、杜鵑の声が聞こえてきた。

小四郎は秀次の寵臣である。邸なども豪奢である。銀燭などが立ててある。

その銀燭を左手へ置いて、上座の円座に坐っているのは、邸の主人の小四郎で、前髪も剃らない若衆であったが、不愉快そうに苦り切っている。

「俺はな」と小四郎は云い出した。

「ひどくあの娘が好きなのだ。廻国風の娘がよ。で、どうしても手に入れなければならない。そこでお主達に頼んだのさ。是非あの娘を盗み出してくれとな。ところがお主達はやりそこなった。先刻から話を聞いていれば、どうやら今後もお主達の手では、盗み出せそうにも思われない。あきらめてしまいえばいいのだが、変に俺にはあきらめられない。一体俺にしてもお主達にしても、普通の女には飽きている。つまり上流の娘とか、ないしは遊女とかいうようなものには、もうすっかり飽きている。漁って漁って漁りぬいたからよ。で、土民の娘とか、地下侍の娘とか、そういう種類の女共に、ついつい引っ張られるというものさ。