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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

Read 血ぬられた懐刀 (ちぬられたかいとう) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 35,586 characters · 71 screens

Aozora Bunko

夜遊にぶつかったこと、秀次が自分を抱えたこと、それに対して抗ったこと、でもズルズルと引きずられたこと、その時懐刀の落ちたこと……最後に気絶をしたことなど……

「ここはどういう部屋なのであろう?」

お紅は四辺を見廻して見た。

いつか老婆は立ち去ったと見えて部屋には誰もいなかった。

「まるで異国へでも来たようだよ」

見る物が驚きの種であった。

「正気づいた時にはこの部屋にいた。変なお婆さんが何か云った。一言も妾には解らなかった」

お紅は空腹を感じて来た。人が気絶から醒めた時には、空腹を感じるものである。

「妾に下された食物なのであろう。では妾は遠慮なく食べよう」

で、お紅は手を延ばして、順々に食物を食べて行った。

「ああ妾は咽喉が乾いた。水注の水を飲むことにしよう」

で、咽喉を潤おした。

しかしお紅は知らなかった。それらの食物や水の中に、愛慾をそそる××質が――麝香とか、芫花とか、禹余糧とか陽起石とか、狗背とか、馬兜鈴とか、漏蘆などというそういう××質が、雑ぜられてあるということを。

ただお紅は飲食をしたため、にわかに体が活々となり、元気づいて来たということと、恍惚とした甘い気持が、心に湧いたということを、感ずることが出来たまでであった。