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ちのもじ

血の文字

黒岩 涙香

Read 血の文字 (ちのもじ) by 黒岩 涙香 (くろいわるいこう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 44,021 characters · 87 screens

Aozora Bunko

筈だが、警「無さ相でも好いじゃ無いか当人が白状したと云えば夫から上確な事は無い、成るほど血の文字が少し合点が行かぬけれど是も当人に篤と問えば必ず其訳が分るだろう、唯吾々が充分の事情を知らぬから未だ合点が行かぬと云う丈の事」判事は目科の横鎗にて再び幾分の危む念を浮べし如く「今夜早速牢屋へ行き篤と藻西太郎に問糺して見よう」と云う。

是にて判事は猶お警察長に向い先刻死骸検査の為め迎に遣りたる医官等も最早や来るに間も有るまじければ夫まで茲に留られよと頼み置き其身は書記及び報告に来し件の巡査と共に此家より引上げたり、後に警察長は予審判事の頼みに従いて踏留りは留りしかど最早夕飯の時刻なれば、成る可く引上げを早くせんと思いし如くそろ/\室中の抽斗及び押入等に封印を施し初めぬ。

余と目科両人は同じ疑いに心迷い顔見合せて立つのみなりしが、目科は徐々と其疑いの鎮まりし如く「爾さなア、矢張り血の文字は老人が書たのかも知れぬ」余は忽ち目を見開き「老人が左の手でかね、其様な事が有うか夫に老人が唯一突で文字などを書く間も無く死だ事は僕が受合う」あゝ余と目科との間柄は早や君僕と云う