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ちのもじ
血の文字
黒岩 涙香
Read 血の文字 (ちのもじ) by 黒岩 涙香 (くろいわるいこう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 44,021 characters · 87 screens
必ず何う見ても老人が自分で書たに違い無いと思われる様に右の手へ附けて置きます、所が之と事かわり、其曲者を私しの云う通り藻西自身だとすれば全く違ッて参ります何うでも左の手へ血を附て置ねば成らぬのです、何故と仰有れば藻西ならば其文字を本統に老人が書たものと認められては大変です、自分の首が無く成ります、何うしても老人が書たで無く曲者の書たに違い無い様に見せて置ねばなりません、爾見せるには何うすれば好いのでしょう、即ち血を老人の左の手へ附けて置くに限ります、左の手に附て置けば誰も老人の仕業とは思わず、去ればとて現に藻西の名を書て有るから真逆に藻西が自分で自分の名を書く程の馬鹿な事を仕様とは猶更思われず、否応なく疑いが外の人へ掛ッて行きます、論より証拠には貴方さえも無理に疑いを外の人へ持て行こうと成ッて居るでは有ませんか、先ア能く考えて御覧なさい」と是だけ言て息を継ぐ、余が返事の出ぬを見、細君は少し気の毒と思いし如く「尤も女の似而非理屈とか云う者でしょう、素より現場も見ませんで、真逆当りは仕ませんけれど既に店番が藻西を見たと云い其上連て居た