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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Read 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,970 characters · 176 screens
(何んといって声をかけたらよかろうか?)
彼はしばらく紙帳を睨んで躊躇った。
紙帳は、そういう彼を、嘲笑うかのように、そよぎもしないで垂れている。
「卒爾ながら、紙帳の中のお方にお訊ね致す」
と、とうとう頼母は、少し強ばった声で云った。
「貴殿、先夜、飯塚薪左衛門殿の屋敷へ、お泊まりではなかったかな」
こう云ってから、これはいいことを訊いたと思った。泊まったといえば、紙帳の中の武士は、五味左門に相違ないからであった。何故というに、左門は、先夜、自分の本名を宣って、薪左衛門の屋敷へ泊まったということであるから。
しかし紙帳の中からは、返辞がなく、紙帳に映っている人影も、動かなかった。
頼母は焦心を感じて来た。それで、ジリジリと、縁側の方へ歩み寄りながら、
「貴殿はもしや、五味左門と仰せられるお方ではござらぬかな?」と訊いた。
すると、ようやく、紙帳に映っている人影が動き、嗄れた声で、
「そう云われる貴殿は、どなたでござるかな?」
と訊き返した。
「拙者は……」
と、頼母は云ったが、当惑した。本名を宣るものだろうか、それとも、偽名を使ったものだろうか?
(相手が五味左門なら、当然宣りかけて討ち取らなければならないし、もしまた人違いなら、無断に襖をあけ、抜き身をさえ構えて誰何した無礼を、これまた、本名を宣って詫びなければ