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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Read 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,970 characters · 176 screens
薪左衛門の記憶は徐々に返って来た。自分が有賀又兵衛と宣り、兄弟分の来栖勘兵衛と一緒に、浪人組の頭として、多勢の無頼の浪人を率い、関東一帯を荒らし廻った頃の、いろいろさまざまの出来事が、次から次と思い出されて来た。
(幾万両の財宝を強奪したことやら)
奪った財宝の八割までを、自分と勘兵衛とが取り、後の二割を、配下の浪人どもへ分配してやった悪辣の所業なども思い出された。そうして、大仕事をすると、官の探索の眼をくらますため、一時組を解散し、自分は今の屋敷へ帰って来、真面目な郷士、飯塚薪左衛門として、穏しく生活したことなども思い出されて来た。
(下総の五味左衛門方を襲い、天国の剣と財宝とを奪い、さらに甲州の鴨屋を襲って、巨額の財宝を手に入れたのを最後として、全然組を解散したっけ)
(その後、来栖勘兵衛は、故郷の松戸へ帰り、博徒の頭になった筈だ)
こんなことも思い出された。
(だが、何んの理由で、俺と勘兵衛とは、この道了塚で決闘したのだろう?)
決闘の現場の道了塚へ来て考えても、その理由ばかりは思い出されないのであった。
(わしの頭脳はまだ快癒りきらないのかもしれない)