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かいのあなにかっぱのいること

貝の穴に河童の居る事

泉 鏡花

Read 貝の穴に河童の居る事 (かいのあなにかっぱのいること) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,260 characters · 32 screens

Aozora Bunko

外海小湖に泥土の鬼畜、怯弱の微輩。馬蛤の穴へ落ちたりとも、空を翔けるは、まだ自在。これとても、御恩の姫君。事おわして、お召とあれば、水はもとより、自在のわっぱ。電火、地火、劫火、敵火、爆火、手一つでも消しますでしゅ、ごめん。」

とばかり、ひょうと飛んだ。

ひょう、ひょう。

翁が、ふたふたと手を拍いて、笑い、笑い、

「漁師町は行水時よの。さらでもの、あの手負が、白い脛で落ちると愍然じゃ。見送ってやれの――鴉、鴉。」

かあ、かあ。

ひょう、ひょう。

かあ、かあ。

ひょう、ひょう。

雲は低く灰汁を漲らして、蒼穹の奥、黒く流るる処、げに直顕せる飛行機の、一万里の荒海、八千里の曠野の五月闇を、一閃し、掠め去って、飛ぶに似て、似ぬものよ。

ひょう、ひょう。

かあ、かあ。

北をさすを、北から吹く、逆らう風はものともせねど、海洋の濤のみだれに、雨一しきり、どっと降れば、上下に飛かわり、翔交って、

かあ、かあ。

ひょう、ひょう。

かあ、かあ。

ひょう、ひょう。

かあ、かあ。

ひょう、

ひょう。

…………

…………

昭和六(一九三一)年九月