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くまとしゃしょう
赤い鳥代表作集 2
木内 高音
Read 赤い鳥代表作集 2 (くまとしゃしょう) by 木内 高音 (きうちたかね) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 14,043 characters · 29 screens
なまぐさい、べとべとしたさけの中にはいつくばっている自分の、うしろの方で、くまはううううと、うなっている。さいわいに、くまの爪にはかからなかったが、たった一つののがれ道であるまど口を、くまのために占領されてしまったのである。
列車は、くまと自分とを真暗やみの貨車の中にとじこめたまま、なにも知らずに、どんどんとはしっている。少し速度がゆるんできたようだ。自分は、また、ブレーキのことを思い出して、ぞっとした。
「うううううう。」
くまはきゅうにまた、ものすごいうなり声をたてはじめた。さて、どうしたら、自分は制動室へもどることができるであろうか?
「うわう……。」
と、一声、すさまじいうなり声をあげたと思うと、いきなりとびかかってきたくまの腹の下を、横にくぐりぬけるようにからだをなげだしたので、あぶないところで、自分はくまの爪にかかることだけはのがれることができたのだが、さて、少し気が落着いてくると、おそろしさと不安とが、前の二倍になって自分の胸におしよせてきた。
たった一つののがれ道だと思ったガラスまどは、くまの大きなからだで、すっかりふさがれてしまったのだ。