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くまとしゃしょう
赤い鳥代表作集 2
木内 高音
Read 赤い鳥代表作集 2 (くまとしゃしょう) by 木内 高音 (きうちたかね) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 14,043 characters · 29 screens
と、自分は、鼻の頭に、煤煙であろう、黒いものがべっとりとついているのを見つけて苦笑した。指のさきにつばをつけて、鼻の頭をこすりながら、わたしは、いままで自分の顔にむけていたランプをくるりむこうへまわすと、ガラスにうつっていた自分の影は消えて、サーチライトのようないなずま形の光が、さっと、ガラスまどを通して、貨車の内部へさしこんだ。その貨車にはちょうど、石狩川でとれたさけがつみこんであったので、自分は、キラキラと銀色に光るうろこの山を予想したのだったが、ランプの光は、ただ、ぼんやりとやみの中にとけこんでしまって、なんにも見えない。おかしいなと思ったので、自分は、立ち上がってガラスまどに鼻をつけるようにしてのぞきこむと、おどろいた。さけの山は、乱雑にとりくずされ、ふみにじりでもしたように、めちゃめちゃになっているのだ。
さけがぬすまれるということは、その季節にはよくあることなので、自分は、さけどろぼうが貨車の中まであらしたのかと思うと、思わず、むッとして、手荒く仕切りの車戸をひきあけて、足をふみこんだ。もちろん、まだどろぼうが貨車の中にぐずついていようとは思わなかったけれど、用心のために、そばにあった信号旗のまいたのを、右手に持ち、左手にランプを高くさし上げて、用心深く進んだ。