Japanese reading practice

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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Read 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 20,146 characters · 40 screens

Aozora Bunko

登は黙って机の前に坐った。

「ではこれで」と津川が立ちあがった、「私の役は済んだようですから失礼します、よろしいでしょうか、若先生」

登は眼も向けず黙ってい、津川玄三は出ていった。おかねはひどく酔っているようすで、坐り直そうとすると、膝が割れ、水浅黄の下の物があらわになった。

「あのばか娘のことはどうきまったんですか」とおかねが云った、「論のあることじゃあない、おろして下さるんでしょうね」

「娘は産みたいと云っている」

「ばかばかしい」おかねは蜘蛛の巣でも払いのけるような手まねをした、「養生所の先生ともある人が、あんなばか者の云うことをまに受ける筈はないでしょ、手っ取り早く片をつけて下さい、こっちはそこらのお大尽と違って、そう暢気なまねはしちゃあいられないんですから」

「それは諦めたほうがいい」と登は怒りを抑えて云った、「娘は子を産むと云っているし、私たちも産ませるつもりだ、あの娘をくいものにすることは諦めるほうがいい」

云ってしまってから、言葉が過ぎた、と登は思った。おかねは屹となった。酔いのためにたるんでいた顔が、まるで紐でも緊めたように硬ばり、いっそう醜く歪んで、いまにも噛みつきそうな表情になった。