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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Read 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,864 characters · 44 screens

Aozora Bunko

彼は狂女の付添いのお杉に向かって、自分が蘭方を本式に学んで来たとか、去定などの知らない治療法を知っているなどと、いい気になって自慢したことを思いだし、ぞっとして、頭を振りながら呻き声をあげた。

登は午飯をたべなかった。

森半太夫が部屋を覗きに来て、いっしょに食事をしようと云ったが、登は寝ころんだままで断わった。まだ胸がむかむかして、食欲などはまったくなかったのである。

「たべておくほうがいいんですがね」と半太夫は云った、「午後から新出先生が外診に伴れてゆくと云っておられましたよ」

「外診ですって」

「治療にまわることです」と半太夫が云った、「ことによると帰りは夜になりますよ」

登は黙った。

「六助という老人は死にました」と半太夫は云い障子を閉めて去った。

赤髯の外診には二つあった。一は招かれたもので、諸侯や富豪の患家が多く、他の一は貧しい人たちの施療であった。――俗に施薬院ともいわれた「小石川養生所」は、もとより貧しい病人を無料で診察し治療するのが目的であって、病状その他の事情によっては、かよいでなく、入所して治療を受けられることもすでに記したとおりである。