Japanese reading practice

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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Read 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 21,864 characters · 44 screens

Aozora Bunko

とおくにが答えた。

「そのとき初めて、あの人がお父っさんの弟子で、おっ母さんと悪いことをして逃げた、ということを聞いたんです、お父っさんはおれといっしょに来い、と云ってくれました、あんな男といると必ず泣くようになる、いまのうちにここを出て、おれといっしょに暮そうって、――あたしは、わざと邪慳に、断わりました、いやです、あたしのことは放っといて下さいって」

おくには身ごもっていたが、富三郎に愛情をもってはいなかった。彼女はただ、父の世話にはなれない、世話になっては済まない、それでは神ほとけも赦すまいと思った。

「あたしはそう思いました、おっ母さんがあの人と逃げたとき、そして、あたしがおっ母さんに伴れだされ、呼び戻しに来られて断わったとき、――お父っさんはどんな気持だったろうかって、どんなに悲しい、辛いおもいをしたろうかって、思いました」

おくには富三郎に云って、金杉のほうへ引越した。そこでともを産み、助三を産んだ。するとまた父が捜し当てて来、幾らかの銀を置いて去った。そのとき父は、槇町の店をたたんだこと、もしなにかあったら、伝通院裏の柏屋という旅籠へ知らせろ、ということを告げたのだという。