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おどるちへいせん
踊る地平線(上)
谷 譲次
Read 踊る地平線(上) (おどるちへいせん) by 谷 譲次 (たにじょうじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 168,926 characters · 332 screens
』
『相手になるな相手に。佐々木のやつ、この頃どうかしてるんだよ。』
ひとりがごく簡単に佐々木さんを退治してしまう。そのほか、日本人は声が高いから、聞くまいとしても色んな話が自然と私の鼓膜を訪れる。この二、三秒間に聞えて来るはなし声を構成派的に並べてみてもこうなる。
『いや、それではかえって恐れ入りまするから、ええ、伯林のほうは伯林のほうと致しまして、ええこちらはわたくしが――。』
『電報でさ――と言って来たろう。困ったね僕も――何しろ切符は買ったあとだし――。』
『は。名古屋でございます。いえ工場は大阪でございますが、どうも事業の中心が。』
『君、酒、呑るかい? ビイル?』
『伊太利はどうも人気が悪くて、ムッソリニなんて大山師ですよ。』
『娘は、ことし県立を出まして、女のくせに洋画のほうへ進みたい――。』
『僕は思うんだが、日米戦争は、だね――。』
『おい、君、君、ボウイさん! ここはどうしたんだい。え、ああ。玉子焼きさ、一人前。』
そうしてむこうではのべつ幕なしに、
『うな丼ワン!』
であり、
『白和え出来ますか。イエス! ツウ・プリイズ!』
なのだ。
このこんとんたる模型日本の環境のなかから、外部に拡がるろんどんの世界をうかがっていると、そのあまりに浮き立っている独自性が頭から私をとらえて、一種異様な気もちが雲のように