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おどるちへいせん
踊る地平線(下)
谷 譲次
Read 踊る地平線(下) (おどるちへいせん) by 谷 譲次 (たにじょうじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,823 characters · 283 screens
春画売りを大声叱咤し、宝石屋を殴り飛ばして、あわれ逮捕の憂眼を見ることとなるであろう。
通行の群集はまるで世界中の敗残者から成り立っている。希臘人・東邦人・あらぶ・埃及人・とるこ人・シリヤ人・回教を信じようとしない「西方から来た白い悪魔」たち・遊牧の貴族べずいん人。その黒くうるんだ大きな瞳・鼻筋から両眉のあいだへ円く巻いて渡した銅の針金・房付帽・長袖下衣・薄物・布頭巾・冠物附外衣・頬を線状に焼いた装飾・二の腕の桃の刺青。
狭い東洋の門戸――PHARAOHの国。
Rue du Nil 街は、木造建築の銀行と煙草の屋台店――ここを下って、土人区へ這入る。
巴里でいえば古着古物屋町だ。半暗と湿気と悪臭の横町が、迷園のように縦横に走り、やけにひさしの突き出た、原色塗りの低い建物がお互いに助けあって並んで、誰かの言った「天刑病市ポウト・サイド」の感じを適切に裏書きしている。砂と埃・半裸体の街上の少年少女・トラホウムで赤い彼らの眼と・細い腕・病菌の沈澱してる路傍の黒い水溜り・胴だけで地べたに笑ってる乞食・骨と皮と耳ばかりの驢馬・その脚の関節の真赤な傷口に群れている虻・邪悪そのもののようなキャフェの土間口・そこの軒下に立って葱を噛っているアラビヤ人の木炭売り・往来の中央で反芻に口を動かしている山羊のむれ・通りを隔てて