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ろくろくび
轆轤首
田中 貢太郎
Read 轆轤首 (ろくろくび) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,065 characters · 11 screens
「咽喉が渇いたようじゃ、彼の水を飲んでまいろう」
怪量は家の者を起さないように、そっと襖を開けて次の間へ出た。その途端に怪量は棒立になった。其処には行燈の燈に照らされて、主人はじめ五つの首のない体がころがっていた。
「はてな、すぐ隣りにいたのに、これは何としたものじゃ」
怪量は四辺に用心しながらその傍へ近づいた。そして、一つ一つ首の附根を改めてみた。首は合せ物が離れたように血の痕もなければ刃物の痕もなかった。怪量の眼が光った。
「轆轤首じゃ、さてはたばかって、わしをおびき寄せたな」
怪量は閃となってそれを見据えたが、やがてその眼がきらりと光った。
「うむ、捜神記か何かで読んだぞ、万一轆轤首の骸を見つけた時、その骸を即刻別の場所へ移しておくがよい、首が骸を移されたのを知れば、恐れ喘いで、三たび地を打って死ぬとあったぞ。よし、妖怪め」
笑が怪量の頬にのぼった。やにわに主人の体を抱きあげたかと思うと、窓を開けて谷底へ投げ飛ばした。投げ飛ばして怪量は家の中を見まわした。戸締は皆中から厳重に出来ていた。
「さては天窓から出おったか」
怪量はそっと裏口を開けて外へ出た。