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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
Read 近世快人伝 (きんせいかいじんでん) by 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 79,469 characters · 157 screens
ところへ思いがけなく向うから笊を前後に荷いだ卵売りに出会ったので呼止めて、二人で卵を買って啜り始めたが、卵というものはイクラ空腹でも左程沢山に啜れるものでない。十個ばかり啜る中に、二人とも硫黄臭いゲップを出すようになると、卵売りは大いに儲けるつもりで、道傍の枯松葉を集めて焼卵を作り、二人にすすめたので又食慾を新にした二人は、したたかに喰べた。
ところでそこまでは先ず好都合であったがアトが散々であった。そこからまだ半道も行かぬ中に二人は忽ち鶏卵中毒を起し、猛烈な腹痛と共に代る代る道傍に跼み始めたので、道が一向に捗らない。併し強情我慢の名を惜しむ二人はここでヘタバッてなるものかと歯を噛みしめて、互いに先陣を争って行くうちに、やっと人家近い処へ来たので二人とも通りかかった小川で尻を洗い、宿屋に着くには着いたが、あまりの息苦しさに、ボーオとなって腰をかけながら肩で呼吸をしているところへ宿屋の女中が、
「イラッシャイマセ。どうぞお二階へお上りなされませ」
と云った時には階子段を見上げてホッとタメ息を吐いたという。
それからその翌日の事。二人とも朝ッパラからヘトヘトに疲れていたので、宿屋からすすめられるままに馬に乗ったら、その馬を引いた馬士が、途中の宿場で居酒屋に這入った。