Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

どうひょう

道標

宮本 百合子

Read 道標 (どうひょう) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 846,457 characters · 1672 screens

Aozora Bunko

ところが増永修三は、伸子のためにマルセーユまでの切符をととのえて届けるというとき、

「ほんとうは、僕もお出迎えに行かなけりゃならないところなんでしょうが、手のはなせないことがあるし、御婦人だから、却ってお邪魔だといけませんし……」

とつけ加え、世間で秀麗と云われるような顔で笑った。なにげなく礼をのべてあいさつしながら、伸子は、彼の小さい笑いに傷つけられた。単純に、失礼します、と云われた方が伸子としてはこころもちがよかった。フランスで、言葉の自由でない若い伸子に日本の封建的なしきたりを口実に、女だから、男のつれは迷惑だろうというのは、すじが通らず、女として侮蔑された感じだった。伸子が気づまりでないようにという親切があるなら、別の座席で、伸子に関係なくマルセーユまでゆくこともできないことではないわけだった。

社交人らしく、自身のスマートさを大切にしているらしい増永とすれば、マルセーユで船からぞろぞろとあがって来る佐々泰造はいいとして、多計代、和一郎、小枝、つや子という一家総勢の姿を想像しただけで、その相伴にあずかるのは気の毒な自分を感じるのだろう。

佐々の一行が家じゅうでパリへ来る、ということのなかには、たしかに誰の目にも何か度はずれなところがあった。