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どうひょう
道標
宮本 百合子
Read 道標 (どうひょう) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 846,457 characters · 1672 screens
ひろい部屋じゅうは混雑していて、引越し最中のように落付かなかった。椅子の上に、多計代の手まわりのスーツ・ケースがふたをあけてのせてあった。多計代は、ねまきの手綱染めの単衣の上に伊達巻をしめた姿で、化粧台に背をもたせ、もう一つの椅子に素足の両足をのせていた。泰造は一つのベッドの上にはすにかけ、和一郎は、窓じきりにもたれて、むっつりとした表情でいる。
三人のそんな様子、小枝のよろこびかた。マルセーユでうちのものと一緒になってからきょうで四日目の伸子には、およそのいきさつが察しられるようになった。伸子は、
「お早うございます」
あっさり父親に挨拶して、多計代のそばへよって行った。
「いかが? お眠れになって? つかれは?――ゆっくりしてごらんになると、やっぱり相当でしょう?」
「ああ、お早う。よく来られたね」
素子に向って多計代は、
「ごめんこうむりますよ、脚がむくんでしまって痛いもんだから」
と、椅子に足をのばしている云いわけをした。
「どうぞ、どうぞ」
多計代は、髪を結ったばかりでいるけれども、泰造も和一郎もきちんとした服装だった。朝飯はすまされ、コーヒー道具が、壁ぎわのテーブルに片よせてある。