Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Read 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) by 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,105 characters · 61 screens
「大事にされる所へ生まれて来やがればよいのに」
妻はそういう下から、手を伸べて顔へかかった赤子の着物をなおしてやる。このやっかい者めがという父の言葉には、もう親のいとしみをこめた情がひびいた。口々に邪慳に言われても、手ですることには何の疎略はなかった。
「今に見ろ、このやっかい者に親も姉妹も使い回されるのだ」
「それだから、なおやっかい者でさあね」
毎日洗われるたびに、きれいな子だきれいな子だといわれてる。やっかいに思われるのも日一日と消えて行く。
電光石火……そういう間にも魔の神にのろわれておったものか、八女の出産届をした日に三ツになる七女は池へ落ちて死んだ。このことは当時お知らせしたことで、僕も書くにたえないから書かない。僕ら夫妻は自分らの命を忘れて、かりそめにもわが子をやっかいに思うたことを深く悔い泣いた。
多いが上にまた子どもができるといっては、吐息を突いて嘆息したものが、今は子どもに死なれて、生命もそこなうばかりに泣いた。
矛盾撞着……信仰のない生活は、いかりを持たない船にひとしく、永遠に安住のないことを深刻に恥じた。
五
七月となり、八月となり、牛乳の時期に向かって、不景気の荒波もようやく勢いを減じたが、幼女を失うた一家の痛みは、容易に癒ゆる時はこない。