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のぎくのはな
野菊の花
小川 未明
Read 野菊の花 (のぎくのはな) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,396 characters · 7 screens
彼が少年で、まだ田舎にいるとき、村に白という宿無し犬がいました。やせたあまり大きくないめす犬であったが、宿無し犬というので、その犬がお勝手もとへくると、どこの家でも水をかけたり、石を投げつけたりしました。やさしい顔でもして、犬がいつくのを怖れたからです。つえをつかなければ歩けないようなばあさんまでが、妙なかっこうをして、そのつえで犬をたたこうとしました。また外で仕事をしているじいさんでさえ、「こいつめ。」とか、なんとかいって、石を拾って投げつけました。
あるとき、その犬が、どこかの物置で子供を生むと、その家の人たちは、みんなその子を川へ流してしまいました。
白は、人間の無慈悲にとうとう気が狂って、ようすの変わった人を見ると、かみつくようになり、夜ごとに子供を思い出しては、悲しい声で泣き叫びました。
その傷ましかった光景が、少年時分の彼の心に刻みつけられて、いまでも忘れないのであります。
青年は、二人の子供が、子犬のために牛乳を探している、やさしい心をいじらしく思わずにはいられませんでした。
「おや、まだ、みんみんが、鳴いているね。」
このあいだのあらしの夜、まったくきかれなくなったので、勇ちゃんは、顔を上げて、原っぱの空を見まわしていました。