Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
きんごじゅうりょう
金五十両
山本 周五郎
Read 金五十両 (きんごじゅうりょう) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,843 characters · 23 screens
「お招き申して粗飯など差上げたいが、さし迫ったとりこみがござってそれもかなわぬ、謝礼と申しては無躾だが、かたち許りの寸志どうぞ御笑納下されたい」
そんなことをと辞退したが、相手はどうしてもきかず、結局それを貰って藤巻家を辞去した。
……宗吉の心は夜が明けたように明るくはずんでいた。
「本当だった、本当だった」
外へ出るなり彼は躍りあがるような気持でこう叫んだ。
「ごまの蠅でも巾着切でもない、あのお侍は見ず知らずのおれを信じて、あれだけの金をあんなにあっさり預けたんだ、くすねられやしないか、たしかに届くだろうか、そんなことは爪の尖ほども疑わず、出会いがしらの人間をいきなり信じてだ、……こんな人もいるんだ、世の中にはこんなに嬉しい事もあるんだ、おれも生きるぞ」
打ちひしがれ絶望していた心が、活き活きと熱い血を噴きだした。これからはなんでもしよう、どんな苦しい事でもやりとおそう、暴風雨も洪水もおしまいだ、雲は散り日が輝きだしたんだ。
……まったく甦ったような気持で、宗吉は宿へ帰るとすぐに立つ支度をした、するとふところからばったり紙包が落ちた、謝礼に貰ったまますっかり忘れていたのである。