Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,547 characters · 27 screens

Aozora Bunko

とうとう彦が、我慢し切れずに声を掛けた。

「親分え、もし、親分え。」

勘次も和した。

「御家新とやらを押せえに出張ろうじゃごわせんか。」

大欠伸と一緒に身を起した藤吉、仮寝していたにしては、眼の光が強過ぎた。胡坐を揺るがせながら、縷々として始める。

「矢文の天誅は欺しだ。なあ、真正の犯人がなんでわざわざ己が字を残すもんけえ。土台、あの矢が弓で射たもんなら、ああ着物を破いちゃあ身へ届くわけがねえ。それに、弓ならあんなに汚なく血が出やしねえや。顔だって、もちっと綺麗に、歪んじゃいねえはず。ありゃあお前、弓矢じゃねえぜ、うんにゃ、矢は矢だが、背後から抱きすくめて手でこじりこせえたもんだ。その証拠を言おうか。仰向の胸に直に立った矢が、見事二つに折れてたじゃあねえか。手で無理をしねえかぎり、矢が折れるってえ道あねえ。」

「しかし親分、」と彦兵衛、「その御家新は逸見流の――。」

「逸見流の矢は、もそっと長え。」藤吉は眼を閉ったまま、「関の六蔵一安三十三間堂射抜の矢、あれだ。いやに太短えもんなあ。」

「へえい! するてえと?」

「往来で殺ってあそこへ引いてった。すりゃこそ、提灯も履物も八百駒の物ばかりで、草加屋のは一つもねえ。