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てつばちとぎょらんと

鉄鉢と魚籃と

種田 山頭火

Read 鉄鉢と魚籃と (てつばちとぎょらんと) by 種田 山頭火 (たねださんとうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,022 characters · 3 screens

Aozora Bunko

我儘を許さなくなる。我儘をたたきつぶして、自他本然の真実心を発露せずにはいられなくなる。

九月四日。

宵からぐっすり寝たので早くから眼が覚めて、夜の明けるのが待ち遠しかった。

芋の葉を机上の日田徳利に挿す。其中庵にはふさわしい生花である。

小雨がふりだした。大根を播く。托鉢はやめにして読書に倦けば雑草を観賞する。

夕方、K君がひょっこり来庵、明日から出張する途次を立ち寄ってくれたという。渋茶をすすりながら清談しばらく、それからいっしょにF屋まで出かける。ほどよく飲んで酔うて戻って来たのは十二時近かったろう。

九月五日。

雨、だんだん晴れる。

今日は澄太君が来てくれる日だ。

待つ身はつらいな、立ったり坐ったりそこらまで出て見たり――正午のサイレンが鳴ってから、やっと懐かしい姿が現われた、Iさんといっしょに。

酒、米、醤油、酢、豆腐、茄子、何から何まで御持参だ。これではどちらがお客だか解らない。客も主人もなくなったところに私たちのまじわりがある。

名残はつきないけれど、六時の汽車へ見送る。人生はすべて一期一会のこころだ。

さて、明日は托鉢しようか、魚釣しようか、もし其中庵にスローガンがあるとしたならば――