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どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Read 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,745 characters · 216 screens
甲斐守は沈吟した。
「解ったようで解らない。だがともかくも今度の事件が、銅銭会という秘密結社の、会員どもの所業であることは、どっちみち疑がいはなさそうだ」
「叔父様」と弓之助は窺うように、「貴人とおっしゃるのはどなたのことで?」
甲斐守はジロリと見た。
「これはな、天下の一大事だ。本来ならば話すことは出来ぬ。これが世間へ知れようものなら、忽ち謀叛が起こるだろう。が、お前には功がある。特別をもって話して聞かせる。貴人というのは将軍家のことだ」
「えっ!」と弓之助は眼をった。「それでは上様が何者かに?」
「一昨日の晩、盗み取られた」
「へえ」といったが弓之助は二の句を継ぐことが出来なかった。
時の将軍家は家治であった。九代将軍家重の長子で、この事件の起こった時には、その年齢五十歳、普通の日本の歴史からいえば、暗愚の将となっている。しかしそうばかりでもなかったらしい。ただ余りに女性的で権臣を取って抑えることが出来ず、権臣のいうままになっていたらしい。少しも下情に通じなかった。権臣がそれを遮るからであった。で彼は日本の国は、泰平のものと思っていた。彼は性、画を好んだ。