Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
どうせんかいじへん
銅銭会事変 短編
国枝 史郎
Read 銅銭会事変 短編 (どうせんかいじへん) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 106,745 characters · 216 screens
女は先刻から待っていた。
やがて酒肴が運び出され、愉快な酒宴が始められた。
そうだいつもならこの酒宴は、非常に愉快な酒宴なのであった。
この日に限って愉快でなかった。女の様子が変だからであった。ろくろく物さえいわなかった。下ばっかり俯向いていた。そうして時々溜息をした。
「おかしいなあ、どうしたんだろう?」若侍は気に掛かった。
と、女が切り出した。別れてくれというのであった。
これには若侍も面食らってしまった。で、しばらく黙っていた。
不快な沈黙が拡がった。
「ふふん、そうか、別れようというのか」こう若侍は洞声で云った。
「余儀無い訳がございまして……」
女の声も洞であった。
また沈黙が拡がった。
「別れるというなら別れもしよう。だが理由が解らないではな」
「どうぞ訊かないでくださいまし」女は膝を手で撫でた。
「どうもおれにはわからない。藪から棒の話だからな」若侍は嘲けるようにいった。相手を嘲けるというよりも、自分を嘲けるような声であった。「では今日が逢い終いか。ひどくさばさばした別れだな。いやその方がいいかもしれない。紋切り型で行く時は、泣いたり笑ったり手を取ったり、そうでなかったらお互いに、愛想吐かしをいい合ったり、色々の道具立てが入るのだが、手数がかかり時間がかかりその上後に未練が残り、恨み合ったり憎んだり