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くにさだえがく

鏡花短篇集 川村二郎編

泉 鏡花

Read 鏡花短篇集 川村二郎編 (くにさだえがく) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,644 characters · 40 screens

Aozora Bunko

上から新撰に飛付く、と突のめったようになって見た。黒表紙には綾があって、艶があって、真黒な胡蝶の天鵝絨の羽のように美しく……一枚開くと、きらきらと字が光って、細流のように動いて、何がなしに、言いようのない強い薫が芬として、目と口に浸込んで、中に描いた器械の図などは、ずッしり鉄の楯のように洋燈の前に顕れ出でて、絵の硝子が燐と光った。

さて、祖母の話では、古本屋は、あの錦絵を五十銭から直を付け出して、しまいに七十五銭よりは出せぬと言う。きなかもその上はつかぬと断る。欲い物理書は八十銭。何でも直ぐに買って帰って、孫が喜ぶ顔を見たさに、思案に余って、店端に腰を掛けて、時雨に白髪を濡らしていると、其処の亭主が、それでは婆さんこうしなよ。此処にそれ、はじめの一冊だけ、ちょっと表紙に竹箆の折返しの跡をつけた、古本の出物がある。定価から五銭引いて、丁どに鍔を合わせて置く。で、孫に持って行って遣るが可い、と捌きを付けた。国貞の画が雑と二百枚、辛うじてこの四冊の、しかも古本と代ったのである。

平吉はいきり出した。何んにも言うなで、一円出した。

「織坊、母様の記念だ。お祖母さんと一緒に行って、今度はお前が、背負って来い。