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に、さんば――じゅうに、さんば
鏡花短篇集
泉 鏡花
Read 鏡花短篇集 (に、さんば――じゅうに、さんば) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,305 characters · 66 screens
――些少じゃが餌の料を取らせよう。」
小春の麗な話がある。
御前のお目にとまった、謡のままの山雀は、瓢箪を宿とする。こちとらの雀は、棟割長屋で、樋竹の相借家だ。
腹が空くと、電信の針がねに一座ずらりと出て、ぽちぽちぽちと中空高く順に並ぶ。中でも音頭取が、電柱の頂辺に一羽留って、チイと鳴く。これを合図に、一斉にチイと鳴出す。――塀と枇杷の樹の間に当って。で御飯をくれろと、催促をするのである。
私が即ち取次いで、
「催促てるよ、催促てるよ。」
「せわしないのね。……煩いよ。」
などと言いながら、茶碗に装って、婦たちは露地へ廻る。これがこのうえ後れると、勇悍なのが一羽押寄せる。馬に乗った勢で、小庭を縁側へ飛上って、ちょん、ちょん、ちょんちょんと、雀あるきに扉を抜けて台所へ入って、お竈の前を廻るかと思うと、上の引窓へパッと飛ぶ。
「些と自分でもお働き、虫を取るんだよ。」
何も、肯分けるのでもあるまいが、言の下に、萩の小枝を、花の中へすらすら、葉の上はさらさら……あの撓々とした細い枝へ、塀の上、椿の樹からトンと下りると、下りたなりにすっと辷って、ちょっと末を余して垂下る。