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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
Read 長崎の鐘 (ながさきのかね) by 永井 隆 (ながいたかし) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 65,109 characters · 131 screens
三週間後、爆心地松山町で蟻の群れが見つかった。蟻は元気であった。一か月後にはみみずがたくさん見つかった。またどぶねずみの走るのも見受けられた。薯の葉を食う虫が一か月後には大いに繁殖した。小動物がこんなふうに生息できるのだから、人類の生息はできると私たちは考えた。植物のほうでは、爆風で吹きとばされた麦が速やかに至る所に芽をふいた(これは翌年普通の麦と同時に開花結実して、その実りは普通のものと大差なかった)。とうもろこしも発芽した。これは冬に入って結実したが、ほとんど粒はつかなかった。朝顔はすぐ蔓をのばし、小さいながら美しい花をつけた。葉には奇形がみられた。甘藷はすぐ蔓をのばし葉をつけたが、芋のできはほとんど皆無であった。菜の類は皆よくできた。私は原子野生息可能説を鼓吹した。ただし、幼児は放射線に対して鋭敏だから、まだ連れて来ぬがよかろうとの意見をつけ加えた。
人が原子野に住居を作るのには四つの時期があった。壕舎期、仮舎期、仮建築期、本建築期である。爆撃直後は防空壕の中あるいは壕を利用し、その入口に屋根をかけて地上地下両生活をする壕舎期で、これは一か月くらい続いた。