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ずいひつぜにがたへいじ
随筆銭形平次
野村 胡堂
Read 随筆銭形平次 (ずいひつぜにがたへいじ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,840 characters · 10 screens
は、どこから考えついたものか、なんか典拠があるなら聴かして貰いたい――ということである。典拠といって別にあるわけではないが、あれは『水滸伝』の豪傑、没羽箭張清から思いついたことで、張清が錦の袋に入れた小石を腰に下げて、その石を飛ばして『水滸伝』の逵傑を片っ端から悩ませ、黒旋風李逵さえもキリキリ舞いさせられる面白さにヒントを得て、かなり重量のある四文銭や、銭形平次の当時には、まだ通貨としての生命をもっていた、永楽銭を利用させたにすぎないと答える外はなかったのである。
鉄砲とか弓とか、大きな機構を有するものはしばらく措き、徳川時代の初期に、なんの機構もない原始的な飛び道具で、しかも非常に有効なものがあったとすれば、それは実に魅力的な存在で、すでに寛永御前試合の毛利玄達の手裏剣といったものが、いと面白く講釈師の張扇の先から生まれて出たわけである。鉄砲か弓のような大きな機構を持たない飛び道具として、私は投げ銭という一つの新手を考え出したのは、大きな成功の一つであったと思う。野球という競技のために、物を投げることや受けることの技術に、一つの興味と自信を持った現代人はともかくとして、三百年前の銭形平次にとって、銭を投げる器用なつぶてが、一つの武器であり得たことにはなんの疑いもない。