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がん
雁
Read 雁 (がん) by Mori Ōgai (森 鴎外) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 73,950 characters · 147 screens
「届くことは届くが、中るか中らぬかが疑問だ」と、岡田は答えた。
「遣って見給え」
岡田は躊躇した。「あれはもう寐るのだろう。石を投げ附けるのは可哀そうだ」
石原は笑った。「そう物の哀を知り過ぎては困るなあ。君が投げんと云うなら、僕が投げる」
岡田は不精らしく石を拾った。「そんなら僕が逃がして遣る」つぶてはひゅうと云う微かな響をさせて飛んだ。僕がその行方をじっと見ていると、一羽の雁が擡げていた頸をぐたりと垂れた。それと同時に二三羽の雁が鳴きつつ羽たたきをして、水面を滑って散った。しかし飛び起ちはしなかった。頸を垂れた雁は動かずに故の所にいる。
「中った」と、石原が云った。そして暫く池の面を見ていて、詞を継いだ。「あの雁は僕が取って来るから、その時は君達も少し手伝ってくれ給え」
「どうして取る」と、岡田が問うた。僕も覚えず耳を欹てた。
「先ず今は時が悪い。もう三十分立つと暗くなる。暗くさえなれば、僕がわけなく取って見せる。君達は手を出してくれなくても好いが、その時居合せて、僕の頼むことを聴いてくれ給え。雁は御馳走するから」と、石原は云った。
「面白いな」と、岡田が云った。