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あめ
雨
織田 作之助
Read 雨 (あめ) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,261 characters · 44 screens
ガレーヂの二階で低い天井を睨んで寝ていたが、肺と知って雇主も困り、
「家があるんやったら知らせたらどないや」
待っていましたとばかり、母親に手紙を書いた。不甲斐ない人間と笑ってください。どうせ今まで何一つ立派なこともしてこなかった体、死んでお詫びしたくとも、やはり死ぬまで一眼お眼に掛りたく……。最後の文句を口実に、自嘲しながら書いた。さっそくお君が飛んでくると思っていたのに、速達で返事が来た。裏書きが毛利君となっており、野瀬君でないのに、はっと胸を突かれた。行きたいけれど行けぬ。お前に会わす顔のない母です。恨んでくれるな。腑に落ちかねる手紙だった。手紙と一足違いに意外にも安二郎が迎えに来た。
安二郎の顔を見て、豹一は呆気にとられてしまい、しばらくは口も利けなかったが、
「じつはお前の母親のことやが……」
と、わざとお君とも女房とも言わずに話しだした安二郎の話を聞いて、事情がわかった。
安二郎の話によると、集金人の山谷はお君を犯したのだった。豹一が家出してからのお君の空虚な心に山谷が醜くつけこんだと、豹一にも想像がつき、聞くなり悲しく顔が歪んだ。しかし、安二郎の表情はもっと歪んでいた。