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あまよぞくし

雨夜続志

田中 貢太郎

Read 雨夜続志 (あまよぞくし) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,181 characters · 11 screens

Aozora Bunko

「さっきも何人かが云ってたね、大臣になって、毎晩牛肉屋へ往きたいって、僕もやっぱり牛肉の方が好いね」

「そうか、じゃ小さい汚い家だが、僕の往きつけで、ちょっと牛肉を喫わせる家があるから、そこへ往こうか」

二人は寺の前の石橋を渡って左の方へ歩いて往った。

そして、五六町往ってちょっとした横町を右へ折れ曲って往くと、家の数で十軒も往った処の右側の門燈に「喜楽」と書いた、牛肉屋とかしわ屋を兼ねた小料理屋があった。山田は前にたって入って往った。

お千代と云う壮い婢が山田の姿を見つけると飛んで出て来た。

「今日はお客様を伴れて来た、平生の室が空いてるかね」

二人は婢に跟いて二階の六畳の室へ往った。中敷になった方の障子が一枚開いていた。そこからは愛宕の塔が右斜に見えていた。伊沢はその中敷に腰を掛けて、ちょっとした歩行にも疲れる足の疲れを治していた。

「僕は、今日、寺へ往く路で、そら、あの病院の前を通って、木内種盛君のことを思ったよ、木内君の死は、ありゃどうしても、ただの病死じゃないね、その当時噂のあったように……」

山田は婢に肴の註文をしていた。

「木内君かね、そうさ、ありゃ、どうしても、青木寛に罪があると思うね、僕は、一昨年、油井伯が歿くなった時分、木内君の夢を見たが、木内君がありありと出て来て、その話をしたよ、青木の奴