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あめしょうしょう
雨瀟瀟・雪解 他七篇
永井 荷風
Read 雨瀟瀟・雪解 他七篇 (あめしょうしょう) by 永井 荷風 (ながいかふう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 145,414 characters · 289 screens
若旦那柳絮はいつぞや仲の町の茶屋に開かれた河東節のお浚いから病付きとなって、三日に上げぬ廓通いの末はお極りの勘当となり、女の仕送りを受けて、小梅の里の知人の家にその日を送っている始末。もしやこのまま打捨てて置いたなら心中もしかねまいと、種彦は知己の多い廓の事とて適当の人を頼んで身請や何かの事は追ての相談に、一先ず女をわが家に引取り男の方へは親許の勘当ゆりるまで少しの間辛抱して身をつつしむようにといい含めて置いたのである。然るをやっと半月たつかたたぬに若い二人はもう辛抱がしきれずに、いつ諜し合したものか互に時刻を計って忍逢おうという。誠に怪しからぬ事だと種彦は心の中に憤ろうと思いながら、自分にも幾度か覚えのある若い昔を思い返せば、何も彼も無理はない事と訳もなく同情してしまわなければならぬ。それと共にいかに恋ゆえとはいいながらかほどまで義理も身も打捨てて構わぬ若い盛りの無分別ほど羨ましいものはないと思うのであった。ああ、あの無分別の半分ほどもあるならば自分は徳川の世の末がいかになり行こうと、あるいは自分の身がいかに処罰されようと、そんな事には頓着せず、自分の書きたいと思うところをどしどし心の行くままに書く事ができたであろう。