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ゆき
雪
中谷 宇吉郎
Read 雪 (ゆき) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 77,536 characters · 152 screens
しからば世界有数の雪国たるわが日本には雪華の研究家が存在したであろうか。
最初に挙げたように、バチバチの発明者とか、流雪溝の考案者とか、先祖代々雪の中に生活していた経験から、必要上いろいろのことを考案した無名の科学者たちは数多くあろう。しかし雪華の研究をした人としては唯一人、今より百余年前即ち西暦一八三二年に『雪華図説』なる一書を著した、下総古河の城主土井大炊頭利位に指を屈するばかりである。この土井利位なる人が如何なる殿様であったかを『大日本人名辞典』その他によって調べて見ると、左のような簡単な記述によって伝えられているのみで、われわれが尊敬を払っている『雪華図説』のことには一言もふれていない。これなども日本の辞典の一つの特色なのであろうか。
ドイトシツラ 土井利位(二四四九―二五〇八)下総古河藩主、土井利徳の男、利厚の養子となる。主膳正、織部正、大炊頭、従四位下に叙任され、寺社奉行、大阪城代、京都所司代を経て老中首座となる。大阪城代在任中、天保八年大塩平八郎の騒擾事件があったが、善処よく平定せしめた。嘉永元年歿。年六十。
彼の遺した『雪華図説』一巻は、一八二〇年代にスコレスビーあるいはグレイシャーの如き世界的雪華研究者として歴史上に不朽の名を遺した人々の仕事と較べても余り遜色がないように思われる。