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ゆきとどろ
雪と泥
山本 周五郎
Read 雪と泥 (ゆきとどろ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,993 characters · 40 screens
あたりはすでに白くなっているため、近づいて来る二人の姿はかなりはっきりと見えた。
「あたしがなにが人が悪い」
「てまえが行燈部屋へ入れられる、旦那のところへ使いを出す、旦那が来て下さりゃあいいが、あの野郎もうちっと困らせてやれかなんかで、ねえ、旦那という方はまたやりかねないんだからこれが、そんな人間は知らないよ、なんてことでも云われたひには」
「ばかだね」客は笑った、「今夜は小格子の連中をあっといわせる趣向なんだ。おまえなんぞを困らせたってしようがあるかえ、いいからそれをこっちへ返して、手順を間違えないようにやってごらん」
「大丈夫でげしょうな、旦那、どうか殺生なことはなさらないように」
二人は小屋の前を通り過ぎ、三間ばかりいった処で立停った。
――二百両、……あの手にそれがある。
折之助は葭簀をはねて外へ出た。左右を見たがほかに人はなかった、濃密に降りだした粉雪のために見えないのかもしれない。彼は二人のほうへ近よっていった。幇間とみえる男が、片手に提灯を持っていた、客のほうは五十年配で、いま受取った物を、ふところへ入れながら、ふと眼をあげて折之助を見た。