Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ゆきとどろ
雪と泥
山本 周五郎
Read 雪と泥 (ゆきとどろ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,993 characters · 40 screens
声もあまったるく、子供めいていて、朋輩と話すときの辛辣で遠慮のない言葉も、どこかしらまのびがして毒がなく聞えた。
「あら、お勝ちゃんが帰って来たわ」
ちよのが云った。彼女はなにかの空箱に入っている粉炭を、その箱ごと火鉢の上へ持っていって、箱の隅から火箸で粉炭を掻き出しながら、うしろへ振返ってそう云った。――そうするとすぐに、障子をあけてお勝が入って来た。五尺そこそこの痩せた躯で、色が黒く赭毛である。しかしひき緊った唇もとや、利巧そうによく動く眼もとは、商家の小間使ふうな着付けや髪かたちによく調和してみえた。
「ただいま、――」とお勝は抱えている小さな包を置きながら、おしのの前へ来て坐った。
「今日はうまくいきましたよ、姐さん、どこへも寄らずに今日はまっすぐお帰りになりました」
「それで、どうだったの」
「みんな本当でした」とお勝は云った。「神田の明神さまのちょっと手前で、立派な大きなお屋敷です」
「ちゃんと慥かめたろうね」
「うまく云って御門番に訊きました、小出又左衛門さまのお屋敷で、いま入っていらしったのは御子息の折之助さまだって、お年寄の門番が教えてくれましたわ」