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せつれいぞくき
雪霊続記
泉 鏡花
Read 雪霊続記 (せつれいぞくき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,120 characters · 13 screens
一つ一つがみなそうでした。――吹雪の渦は湧いては飛び、湧いては飛びます。
私の耳を打ち、鼻を捩じつつ、いま、その渦が乗っては飛び、掠めては走るんです。
大波に漂う小舟は、宙天に揺上らるる時は、ただ波ばかり、白き黒き雲の一片をも見ず、奈落に揉落さるる時は、海底の巌の根なる藻の、紅き碧きをさえ見ると言います。
風の一息死ぬ、真空の一瞬時には、町も、屋根も、軒下の流も、その屋根を圧して果しなく十重二十重に高く聳ち、遥に連る雪の山脈も、旅籠の炬燵も、釜も、釜の下なる火も、果は虎杖の家、お米さんの薄色の袖、紫陽花、紫の花も……お米さんの素足さえ、きっぱりと見えました。が、脈を打って吹雪が来ると、呼吸は咽んで、目は盲のようになるのでありました。
最早、最後かと思う時に、鎮守の社が目の前にあることに心着いたのであります。同時に峰の尖ったような真白な杉の大木を見ました。
雪難之碑のある処――
天狗――魔の手など意識しましたのは、その樹のせいかも知れません。ただしこれに目標が出来たためか、背に根が生えたようになって、倒れている雪の丘の飛移るような思いはなくなりました。