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せつれいきじ
雪霊記事
泉 鏡花
Read 雪霊記事 (せつれいきじ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,532 characters · 14 screens
そんな事まで思いました。
円髷に結って、筒袖を着た人を、しかし、その二人はかえって、お米さんを秘密の霞に包みました。
三十路を越えても、窶れても、今もその美しさ。片田舎の虎杖になぞ世にある人とは思われません。
ために、音信を怠りました。夢に所がきをするようですから。……とは言え、一つは、日に増し、不思議に色の濃くなる炉の右左の人を憚ったのであります。
音信して、恩人に礼をいたすのに仔細はない筈。けれども、下世話にさえ言います。慈悲すれば、何とかする。……で、恩人という、その恩に乗じ、情に附入るような、賤しい、浅ましい、卑劣な、下司な、無礼な思いが、どうしても心を離れないものですから、ひとり、自ら憚られたのでありました。
私は今、そこへ――
五
「ああ、あすこが鎮守だ――」
吹雪の中の、雪道に、白く続いたその宮を、さながら峰に築いたように、高く朦朧と仰ぎました。
「さあ、一息。」
が、その息が吐けません。
真俯向けに行く重い風の中を、背後からスッと軽く襲って、裾、頭をどッと可恐いものが引包むと思うと、ハッとひき息になる時、さっと抜けて、目の前へ真白な大な輪の影が顕れます。