Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
でんきぶろのかいしじけん
電気風呂の怪死事件
海野 十三
Read 電気風呂の怪死事件 (でんきぶろのかいしじけん) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,788 characters · 34 screens
突如、
「吁ッ、此処に有った!」
と、職人風の一人が両手をさあッと挙げて頓狂な叫びを発した。と、同時に、冷水管を通す円い穴の向うで、「きゃッ」という叫びが弾かれた。――それは、先刻狼狽して釜場の方へ飛んで行った湯屋の女房であった。彼女は、覗き穴へ当てた片眼の前で、余りにも唐突に職人の一人が声を発したので吃驚したのである。のけぞり反るように、逃げ腰に振り返った途端、発止と鉢合せたのは束髪に結った裸体の女客であった。
「見ちゃいけません。見ちやいけません。早くお帰んなさい」
前後の見境なく、女房はその女客を片腕で制して押し戻した。その女客は、手に何か黒いかさばったものを持っているらしかったが、此際そんなことは、女房に取って注意を要すべきことではなかった。ただ、その女客が黙って元来た女湯の方へ行こうとするのにおっ冠せて、
「あの、女湯の方には変りはありませんでしたでしょうか?」
と問いかけた。すると、その女客は引戸に手をかけたまま、ちょっと振返ったが、
「いいえ、別に何とも……」
と、曖昧に答えてそのまま女湯の流し場の方へ入ってしまった。
その引戸が閉まると同時に、女房は何故か一抹の疑心を感じて、念のため女湯の方を見廻りたいと思った。