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でんしゃていりゅうじょう
電車停留場
豊島 与志雄
Read 電車停留場 (でんしゃていりゅうじょう) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,082 characters · 31 screens
俺は此処にこうして、逃げも隠れもしないで待っていてやる。俺一人を引張っていって、俺に責任を塗りつけようとしても、そうはいかないぞ。」
「然し君は兎に角、暴行を働いた本人だから、本署まで同行するのが当然だ。本署へ行った上で、云いたいことがあったら云うがいい。」
そして沼田英吉は彼を引立てようとした。その手先を彼は払いのけた。
「あくまでも君は手向うのか。」と云って沼田英吉は相手の顔を見据えた。
先刻から沼田英吉は、相手の男のうちに、一種の犯罪性を嗅ぎつけてるのだった。も一人の男を取逃した失態から、俄に警官としての自分の立場を、はっきりしすぎるくらいに自覚して、そのために、警官としての眼だけが、鋭く光り出したのである。その眼は一種の拡大鏡に似ていた。高倉玄蔵の、露わな胸元の黒い毛、太い指先、少し縮れ加減の耳朶、口元の一寸したたるみ、そして何よりも、じっと見据えたように、いやに執拗な意図と困惑の色とが籠ってること……などから彼は、誰にでもあるくらいの犯罪性を、大袈裟に抽出して、それで相手の男を批判した。大なる犯罪は持っていなくとも、何等かの尻尾を出させ得るものと思った。