Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しもばしら

霜柱

山本 周五郎

Read 霜柱 (しもばしら) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,328 characters · 29 screens

Aozora Bunko

と云って男は大きく息を吐いた、「腹の焼けるときにゃあ冷に限るってな、躯の隅ずみまでしみとおるぜ」

憎みや怒りの中だけでは生きられない、と喜兵衛は心の中で思った。時が経つうちには、どんなに深い憎悪も怒りも、やわらげられ、いやされてゆく、時岡八郎兵衛が現にその事実をみせてくれた。

――繁野さんもそうではないだろうか。

六十歳近くなって養子も取らないのは、いつかわが子が帰って来る、性根が直り、侍らしい人間になって帰るだろう、そう思って待っているのではないか。勘当したときの怒りや憎みはすでにやわらいで、ただわが子の帰るのを待っているのではないだろうか、そう考えて八郎兵衛の話をしたのだが、そうだとすると待ち甲斐がなかった。これでは帰って来ないほうがよかった、と喜兵衛は思った。

「おれがこんな人間になったのは、おれのせえじゃあねえ、わかるか」と男は饒舌っていた、「おい、聞いているのかよ」

男はさっきから饒舌っていたのだ。

「聞いている」と喜兵衛は答えた。

「人間はな、氏より育ちっていう」男は手の甲で口を横撫でにした、「親の育てかたしだいでよくもなれば悪くもなるんだ、そうだろう、おれの親はなっちゃなかった、てめえたちには一粒だねだから、可愛くって大事な子だったろう、まるで飴ん棒のように甘く、我儘のし放題に育てた、小言を云う