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きりがくれいかほのゆけぶり
霧陰伊香保湯煙
三遊亭 円朝
Read 霧陰伊香保湯煙 (きりがくれいかほのゆけぶり) by 三遊亭 円朝 (さんゆうていえんちょう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 117,546 characters · 234 screens
……アヽ失策ったと眼を開いて見ると、お瀧は竈の下を焚付けて居ますが松五郎は居りません。
茂「お瀧/\」
たき「あい」
茂「松公は何うした」
たき「早く帰りました」
茂「少し用が有るんだッけ……アヽーまた明日呼ぼう」
と云って同じく遣って見たがいけません。口惜い/\と思って不図考え付いてお瀧を呼び、
茂「お瀧、己は東京へ金策に往って事に寄ると横浜へ廻って来る」
と宅を出まして、直近村の太田の知己の家に居て、日の暮れるを待って、ソッと土手伝いに我家へ忍んで来ました。畠には桐を作り、大樹が何十本となく植込んで有り、下は一杯の畠に成って居ります。裏手の灰小屋へ身を潜め、耳を引立て宅の様子を聞いて居りますると、お瀧が爪弾で何か弾いて居ります。此の爪弾が合図に相違ないと思って居る中に、夜は次第に更けわたり、しんと致すと、何処の寺の鐘か幽かにボーンと聞え、もう十二時少し廻ったかと思う時刻に、這入って来たのは村上松五郎と云うお瀧の情夫で、其の時分は未だ髷が有りました。細かい縞の足利織では有りますが、一寸気の利いた糸入の単物に、紺献上の帯を締め、表附のノメリの駒下駄を穿き、手拭を一寸頭の上へ載せ、垣根の処から這入って往く