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あおべかにっき
青べか日記
山本 周五郎
Read 青べか日記 (あおべかにっき) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 37,334 characters · 76 screens
〔よくは分らない〕土堤の桜は満開だ。材木屋のふく良い娘である。ひるま子供達の中の悪たれとけんかした。ばかな事だった。今は午前三時である。横浜へ行こうと思う。「裸婦」が終ったら行こうと思う。今日は良い為事をした。いい夢があるに違いない、静子よ。(二五八九、四、一二)
しっかりと坐って
腹に力があって
頭がすっきりとして
さあ来いと云う
気持になった時に
急がずに書く。(四、一二)
「裸婦」十五枚書いて全部了った。相当な出来だと思う。高梨から金を借りた。風がひどい。比較的温かかった。昼間沖の方から養魚場の突堤の先まで行った。汀に下りたら蟹が大騒ぎで遁げまどって面白かった。海蟹もいた。今は大潮で海は見渡す限り干潟になっていた。歩いて千葉へ渡れそうだった。今は風が強い、一時頃にひどい驟雨があった。今はやんでいる。今日秋葉君は本所の「釜屋の川」で腐敗した水の中にもぐって、船の推進器に絡みついた針金を断ったと。全身が溝泥で染まってひどく臭かったと。何しろ、あの黒い、メタン瓦斯を吐いている水の中へ頭までもぐって為事をするのだから些っと耐える。今は午前四時である。横浜へは行くまいと思う、何しろ金がないのだから。