Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
Read 青べか物語 (あおべかものがたり) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 160,961 characters · 317 screens
「あたいははあんと思ったよ、きたなって思っちゃったよ、ははあんきたなってさ、わかるでしょ先生」と栄子が云った。
私が答えると、栄子は鼻で笑った。
「わかんないかな、あたいの躯だよ」と栄子は動物的に張りきった胸を叩いてみせた、「そんなこと云えばあたいがくしゃっとまいってさ、くらがえしてでも三〇〇ぐらいのお金は拵えるだろう、って見当つけて来たんさ、子供騙しだよまったく」
そのときは栄子自身も不景気で、にっちもさっちもいかない状態だった。雑貨屋や銭湯にまで借りが溜まっていたから、そのわけを話していっしょに死にましょうと答えた。彼女たちのあいだでは「心中」という言葉は愛情の極致を示すものであり、誰でも一生にいちどはやってみたいとあこがれるものだ、と栄子は云った。――岸がんは思い詰めたような顔をしたそうで、それなら催眠薬の強いのを持って来るから、それをのんで死ぬことにしよう、あさっての晩に来るが心変りをしないように、と云った。栄子は催眠薬なら自分がドイツ製のを持っている、あんたはあんたの分だけ持ってくればいい、と答えた。そんな物をどうして持っているんだ。まえに自分の友達が自殺したとき、残りを隠して置いたのだ。